コロナ禍で話題になったワクチンがあります。日本人に新型コロナウイルスの感染者が少ない理由を山中伸弥教授が「ファクターX」と呼びました。そのファクターXが「BCGワクチンの接種」ではないかとの推測があり、BCGワクチンの出荷が例年以上に増加しました。
しかし、この推測は外れたようで、2021年12月8日、理化学研究所が「ファクターXは日本人に多い特定の免疫タイプが要因の一部だ」と解明しました。
BCGワクチンは結核のワクチンと言われますが、肺結核を防ぐためのワクチンではありません。結核には、一般的な肺結核と、結核菌が血流にのって全身や脳に広がり急性の症状を起こす血行性の結核と2種類あります。BCGは赤ちゃんの時期にかかる血行性の結核のみを予防するワクチンです。(「子どもと親のためのワクチン読本」著/母里啓子)
ワクチンの添付文書(医薬品の取扱説明書)にも「BCG接種は、結核性髄膜炎(ずいまくえん)や粟粒(ぞくりゅう)結核など小児の重篤な結核の発病予防には特に効果は高い」とあります。
小児の結核性髄膜炎(ずいまくえん)や粟粒(ぞくりゅう)結核の発症は、毎年1人程度です。
BCGワクチンは平成17年までは4歳未満の児童が対象でしたが、平成17年に生後6ヵ月までに対象が変更されました。すると、生後3~4ヵ月の乳児に、BCGによる骨炎の副反応報告が増えたため、平成25年度以降は生後1歳に至るまでの接種に変更されました。ワクチン行政は紆余曲折しています。
BCGワクチンは「コッホ現象」が生じる場合があります。添付文書に「接種後、接種局所の反応が10日以内に出現した場合(コッホ現象)は、被接種者が結核に感染した可能性が高いので、コッホ現象が生じた場合には、保護者に結核感染に関する必要な検査を行うため、接種医療機関を受診するように伝えること」とあります。毎年300~500人程度の報告があります。
小児が結核性髄膜炎や粟粒結核を発症する可能性(毎年1人程度)と、BCGワクチンの重篤な副反応(骨炎・骨髄炎など)や「コッホ現象」などのリスクを天秤にかけてみましょう。
乳児は副反応で具合が悪くなっても「痛い」「苦しい」と言えません。
*本記事は日頃の活動で得た情報をまとめたものです。
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